乱読からのつぶやき

「貞観政要」呉兢

名君の誉れ高い唐の太宗(李世民)とそれを補佐した名臣たちとの政治問答集。日本の歴史に遣唐使があったが、そのころの話。徳川家康明治天皇も読まれたらしい。今が平穏だからといって、明日どうなるかわからない。平穏な時ほど緊張感を高め事に取り組み、来るべき危機に備えるなど。帝王学の古典。

…古人がこう言っている、「林にすむ鳥は、高い木をさがして、そのまた梢に巣をつくる。水にすむ魚は、深い淵を求めて、そのまた岩かげに穴をつくる。それでも人手にかかるのは、餌を貧るからだ」と。さて…

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守屋洋

 

「思考の整理学」外山滋比古

1983年に刊行され、1986年に文庫化された。30年間で200万部以上売れたベストセラー。長い間売れたのには訳がある。エッセイ形式で文章が短くまとまり読みやすい。学校の学びがグライダーで飛行機を作りにくくなっていると説く。考えたことを寝かせる事や、三上:馬上・枕上・厠上での考え事。三多:看多・做多・商量多で文章上達の秘訣など参考になることが多く書かれている。朝ご飯前に考えるのが良い。そのために朝飯を抜いてしまえとの発想も面白い。

…倉庫としての頭にとっては、忘却は敵である。博識は学問のある証拠であった。ところが、こういう人間頭脳にとっておそるべき敵があらわれた。コンピューターである。これが倉庫としては、すばらしい機能をもっている。いったん入れたものは決して失わない。必要なときには、さっと引き出すことがでる整理も完全である。(略)ようやく創造的人間ということが問題になってきた。コンピューターのできないことをしなくては、というのである…

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2020年7月30日96歳お亡くなりになる。「アイディアのレッスン」も読みたい。
カバー装画:安野光雅も同年12月24日94歳でお亡くなりになった。

 

「伝わる・揺さぶる!文章を書く」山田ズーニー

仕事で役立つ本。7つの要件の思考法、より効果を出す!テクニックは、メモして文章を書くときに思い出すようにした。全体に、まとまっていて分かりやすい。

…あなたが文章を書くという事は、あなたが納得いくまで自由にものを考えてよいということだ。決められた1つの正解がよそに存在するのではない。常識や模範解答のようなものがあるなら、むしろ、打ち壊していくところに、他ならぬあなたが考える意味がある。自分が頼りにしてきた参考書だって、いったん否定してみたら?意見は自分の中にある。必要なのは、それを引っ張りだす方法だ…

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おとなの小論文教室。 - ほぼ日刊イトイ新聞 (1101.com)

 

「理科系の作文技術」木下是雄

理科系の視点だが、文科系が読んでも大変参考になる。文の構成、事実と表現、わかりやすく簡潔な表現等中盤が特に役立つ。文章を書くときに思い出しながら書くことにする。

…日本語では、いくつかのことを書きならべるとき、その内容や相互の連関がパラグラフ全体を読んだあとではじめてわかる(略)英語ではこれは許されない。一つ一つの文は、読者がそこまでに読んだことだけによって理解できるように書かなければならないのである…

…事実の記述:(a)その事実に関してその文章のなかで書く必要があるのは何々かを十分に吟味せよ(b)それを、ぼかした表現に逃げずに、できるだけ明確に書け(c)事実を記載する文はできるだけ名詞と動詞で書き、主観に依存する修飾語を混入させるな…

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「人生論ノート」三木清

死、幸福、懐疑、習慣、虚栄、名誉心、怒、人間の条件、孤独、嫉妬、成功、瞑想、噂、利己主義、健康、秩序、感傷、仮設、旅、個性について書かれている。昭和13年6月から「文學界」に掲載されたものをまとめたもののため、区切りが良く読みやすい。物事を論理的に考え直し思慮した。

…虚栄は人間的自然における最も普遍的な且つ最も固有な性質である。虚栄は人間の存在そのものである。人間は虚栄によって生きている。虚栄はあらゆる人間的なもののうち最も人間的なものである…

…旅は過程であるが故に漂泊である。(略)旅の利益は単に全く見たことのない物を初めて見ることにあるのではなく ーー全く新しいといい得るもが世の中にあるであろうかーー むしろ平素自明のもの、既知のもののように考えていたものに驚異を感じ、新たに見直すところにある…

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「創元選書」刊行の目的がいい。

「仙台本屋時間」前野久美子

「book cafe火星の庭」前野さんが企画・編集された本。佐伯一麦柳美里などのエッセイ、エリアごと本屋散歩のお話など。本、本屋のことがいっぱい書かれた本で、しあわせな気分になりながら読んだ。若かりし頃に住んだことのある仙台に、また出かけたくなった。コロナ禍が落ち着いたら出かけよう。

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写真:志賀理江子 さし絵:工藤夏海

「ABE MARIA」谷崎潤一郎

谷崎のフェチの要素を残しながら、戦後の早百合子の話。挿絵の東郷靑児の絵も色気があって良い。

…私は以前お前と一緒によく見に行った帝国館やキネマ倶楽部や金春館の時分の事を想い出す(略)私はいつもさふ思ってゐる、映畫と云ふものは人間か機械の力で作るやうになつた精巧な夢だと。人は最初に酒を作り、音楽を作り、詩を作り、そして最後に夢を作ることに成功したのだ…

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全國書房版 昭和廿二年十月二十五日發行