乱読からのつぶやき

「そこから青い闇がささやき」山崎佳代子

ベオグラード、戦争と言葉。と副題が付いている。山崎さんは、セルビア共和国ベオグラード市在住の詩人、翻訳家。当時、ユーゴスラビアで戦争が起きていた時に、避難せずに生活を続けた。戦争では、橋が落とされ、病院や学校が爆撃された。近隣の知人が亡くなっている。実体験が伝わってくる。

…私はひとりで、窓の向こうの空を眺め続けた。炎は、しだいにゆるやかになってゆき、あんなに黒々と吐き出された煙が、静かに消えてゆく。(略)トマホークが私たちの耳の奥に残した音は、激しい音だった。鳥の声は、小さな声だ。だが、これからの私の命に勇気を与えてくれるのは、激しい炸裂音ではなくて、鳥たちの囁きに違いない…

…ステバン氏は言った。文学にとって大変な時代が来る。質より量が押し寄せる。何が良いものか、それを見出すことが困難になっていく…

カバーデザイン:五十嵐哲夫