乱読からのつぶやき

「放浪記」林芙美子

1922年(大正11年)から1927年までの日記形式で書かれた自叙伝。貧しいながらも、仕事や住むところを転々としながら、悲しくて泣いたり、旅に出たしながら生きている。時代背景も感じられる。

女工が二十人、男工が十五人の小さなセルロイド工場、鉛のやうに生氣のない女工さんの手からキュウピーがおどけて出たり、夜店物のお垂げ止めや、前帯芯や、様々な下層階級相手の粗製品が、毎日毎日私達の手から洪水の如く流れていく…

…やつぱり旅はいゝ。あの濁つた都會の片隅でへこたれてゐるより、こんなにさつぱりした氣持になつて、自由にのびのび息を吸へる事は、あゝやつぱり生きてゐる事もいいなと思ふ…

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復刻版:昭和47年印刷 原本:昭和5年印刷