乱読からのつぶやき

「JR上野駅公園口」柳美里

上野恩賜公園でホームレスをしている1933年生まれの主人公が、高度成長期の東京オリンピック建設に出稼ぎをしたこと、東北の家族のこと、東日本大震災で家族を亡くしたことなど、話が交差しながらテンポよく読める。天皇家の方々が美術館等に訪れる、行幸啓のために、ホームレスは、一時公園から移動しなければならない話など興味深く読めた。

…あの日ー、時は過ぎた。時は終わった。なのに、あの時が、ばらまかれた画鋲のようにそこかしこに散らばっている。あの時の悲しみの視線から目を逸らすことができずに、ただ苦しむー…

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装幀:鈴木成一デザイン室 装幀写真:高﨑沙弥香