乱読からのつぶやき

2023-01-01から1年間の記事一覧

「生殖する人間の哲学」中真生

母性と血縁を問いなおす。「第一の親」、母とは、父とは、育ての親とは。 …生むことに代わって、母であることのもっとも重要な核となるのは、性別に関係なく、また自分が生んだかどうかにも関係なく、育てることを中心に子どもと深くかかわることにあると考…

「しかもフタが無い」ヨシタケシンスケ

この本は、ヨシタケさんが、30歳のときに初めて書店に出た本の文庫版です。粗削りなところがありますが、ヨシタケワールドに引き込まれます。初版は、カバー裏にもお楽しみがありました。

「現代思想入門」千葉雅也

立命館大学文学部の授業「ヨーロッパ現代思想」をベースに書かれた新書。読み方、考え方を伝えながら、理解しやすく作られている。フランスを中心に展開された「ポスト構造主義」デリダ、ドゥルーズ、フーコの事から書かれ、最後は、「ポスト・ポスト構造主…

「外科室・海城発電」泉鏡花

初期の代表作7編。明治期の表現で読みにくさはあるが、医師と患者の間柄で再開し手術する話や、検察官と殺人犯の間柄の話など内容にインパクトがある。 …渠は有間惘然として佇みぬ。その心には何を思ふともなく、きよろきよろと四面を眗せり。幽寂に造られた…

「新戦後派」野坂昭如 寺山修司 永六輔 野末陳平

昭和44年に刊行された本。4名の著名人に毎日新聞社編集部が、インタビューしたものをまとめている。この4人は、昭和一桁生まれで、1945年8月15日に、何歳でどこにいて、終戦をどう迎えたかのか。昭和一桁生まれは、精神形成初期に、日常生活も教育も、国家に…

「透明な夜の香り」千早茜

集英社ナツイチの1冊。調香師の家で家事手伝いのアルバイトをする主人公の話。美味しい食事が出てくるところは千早さんの作品らしい。“香り”というものをあらためて考えた。 カバーデザイン:大久保伸子

「贋作吾輩は猫である」内田百聞

夏目漱石の名作「吾輩は猫である」の三平君のビールを飲んで酔っ払っているところから始まる。人間観察の描写が面白い。 …君のとこの長唄の三味線なんか、よせばいいのだよ。今まで黙ってゐた校長の波斯猫が、にがにがしそうに云った… 装画:川上澄生

「Chat GPTがよくわかる本」イワタ ヨウスケ

基本的な仕組みや、現在の流れ、使い方や質問の仕方など分かりすく書かれている入門書。関連書を数冊、同時に読むと理解力があがる。

「いのちの初夜」北條民雄

ハンセン病(癩病)患った青年が、収容施設に入り、生活や闘病生活の事など8編。あとがきは、川端康成が書いている。 …意志の大いさは絶望の大いさに正比する、とね。意志のないものに絶望などあろうはずがないじゃありませんか。生きる意志こそ絶望の源泉だ…

「天才はあきらめた」山里亮太

山ちゃんのこれまでの生活が書かれている。M1グランプリで準優勝し、M1バブルのことや、ネタ作りの執念が伝わるエピソードなど読みごたえがある。包み隠さず、気取らず書かれているのが良い。 …街中をぶつぶつ言いながらメモを取りながら歩いて、壁にぶつ…

「銀座幽霊」大阪圭吾

昭和10年頃に、雑誌「新青年」に掲載された短編11作品。戦前の雰囲気も味わえる。 …全く、座席の後ろの四角い硝子窓からは、テール・ランプに照らされて仄赤くぼやけた路面が、直ぐ眼の下に見えるだけで、あとは墨のような闇だったのだが、直ぐにその闇の中…

「純喫茶とあまいもの」難波里奈

慌ただしい日々の中での小さな逃避行としてもちょうどよく、懐かしい雰囲気にほっとできる空間が、昔ながらの喫茶店です。 見ているだけでも楽しい本、行ってみたくなる本。 新装版 デザイン:田山円佳

「レンズが撮らえた幕末明治の女たち」 監修 小沢健志

幕末明治の日本に生きた女性たちを今に見ることができるのは、十九世紀半ばから後半の世界における写真の勃興期に、いち早く隆盛した初期日本写真の功績によるものである。明治に東京百美人・・美人コンテストがあったことにビックリ。今見ても美人揃い。レ…

「学び続ける理由」戸田智弘

99の名言と学びについて書かれている。一通り読んだら、時々ペラペラめくりながら読みたい。 …自分が学んだことを、誰か他の人に教えてみる。そうすることでもう一度学ぶことが出来る(略)他の人に説明してみると、自分の理解が不十分だったり、曖昧だった…

「こりずに わるい食べもの」千早茜

わるい食べものの第3弾。何々が嫌いだと言い切るエッセイ。食べることが大好きなことが良く伝わってくる。今回は、京都から東京に引っ越し、コロナ禍のときに書かれた作品。茜氏、挿絵担当北澤氏、編集T嬢との仲の良さが3作に繋がったのかも。 …京都を離れる…

「街とその不確かな壁」村上春樹

読了。世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド、海辺のカフカ、騎士団長殺し、そしてノルウェーの森などの要素が入った作品。村上ワールド満載。文學界1980年9月号に掲載された作品を書き直した作品。 …コーヒーショップのスピーカーから流れる、ポー…

「双面の天使」小池真理子

表題の作「双面の天使」新しいママがふたりに頼んだ赤ちゃんとの留守番の話。子どもたちが行ったことだけに怖さが倍増する。他の作品含ためサイコ・スリラー4編。 …三月というのに、雪でもちらつきそうなほど寒い日だった。午後五時。日が落ちて、窓の外はす…

「脳科学者の母が、認知症になる」恩蔵絢子

記憶を失うと、その人は“その人”でなくなるのか?をアルツハイマー型認知症の母と生活の中から、学者目線と家族目線の両方から書かれている。人それぞれだろうが、状況分析がアルツハイマー型認知症の理解につながる分かりやすい本 ...母の変化は、要するに…

「モア・リポートの20年」小形桜子

1980年、雑誌「モア」誌上で女性の性に関するアンケートが実施された。1987年には、モア・リポートNOW。1998年には、モア・リポート99が実施され、この3回のリポートを基にまとめた新書。女性の性の実態が分析されている。 2001年1月22日第1刷発行 …我々の社…

「なにがなんでも ほがらか人生相談」鴻上尚史

ほがらか人生相談の4冊目。多様な相談に的確に答えている。演出家、鴻上さんの苦労の賜物と思われる。参考になります。 …まずは、楽しさを経験させ、そして、ほめるのです。なんでもかんでもほめろと言っているのではありません。ほめる時には「待つ時間」が…