乱読からのつぶやき

「愛の渇き」三島由紀夫

大阪の田舎で生活する悦子を主人公にした話し。良人(夫)良輔の死。彌吉、三郎などの人間模様。負の力から喜びや生きがいを感じる悦子が怖い。このような考え方もできるのかと感心した。

…悦子は四十度の熱がすでに十日もつづいて、その熱が封じ込められて苦しげに出口を探してゐる良人の肉體の傍らに坐ってゐた。レースの週末に近づいたマラソン選手のやうに、良輔は鼻孔をふくらませて喘いでゐる。寝床のなかで、彼の存在は懸命に走りつづけてゐる一種の運動體に化身してゐるのだ。悦子はといえば、悦子は聲援してゐる…

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