杭州湾敵前上陸記。改造社から昭和13年に出版。兄が弟へ宛てた手紙形式で書かれている。狭い船上でのこと。上陸後は、泥道をひたすら歩き、戦闘のことなど淡々と書かれている。兵隊の目線なので、これから、何処へいくのか、今、何処にいるのか分からずも命令で進んでいく様子が伝わる。
…我々の行軍が少しも楽になったのではない。我々は苦難を越えて、1つの勇気と力を得たにもかかわらず、私は苦しくて堪らず、歯を噛み、唇を噛み、機械のごとく歩いて行った。私はただ倒れまいとする努力ばかりに操られて動いたのである。やがて、ありがたいことに、戦争が始まった。ありがたいことに、そのために我々の部隊は停止したのである…
旧字体だが、振り仮名がついており読みやすい。