乱読からのつぶやき

「珈琲挽き」小沼丹

講談社文芸文庫で読む。随筆集で、3部に分かれている。一部*は、身近な出来事。二部**は、自然、家の庭の事。三部***は、イギリスでの生活などが書かれている。全編、ほのぼのとした内容。

…いつだったか、この帽子を失くしたことがある。酔っていたから、どこで失くしたのかさっぱり判らない。その前は傘を失くした。これもどこで失くしたか判らない。或る晩、暫く振りに荻窪の或る酒場へ行ったら、―はい、お傘‥‥‥。と失くなった筈の傘を出して呉れたから大いに面喰った。傘を持ってその店に行った記憶は全然無いのだから…

…その写真を見たら、はてな、と思った。(略)七、八年前ロンドンで暮らしたときはその近くの家に住んでいてその通りは毎日の散歩道であった。ロンドンの北西部にある住宅街だが、当時は漱石が(八十年前)そこに下宿していた(場所だった)とは露しらない…

解説は、清水良典