乱読からのつぶやき

「銀座幽霊」大阪圭吾

昭和10年頃に、雑誌「新青年」に掲載された短編11作品。戦前の雰囲気も味わえる。

…全く、座席の後ろの四角い硝子窓からは、テール・ランプに照らされて仄赤くぼやけた路面が、直ぐ眼の下に見えるだけで、あとは墨のような闇だったのだが、直ぐにその闇の中に、何処からか洩れて来る強烈な光に照らされて、いま自動車が通り越したばかりの道端の道路標識が、鮮やかにも浮きあがるのだ…

東京創元社