乱読からのつぶやき

「棺の中の悦楽」山田風太郎

ストーリー展開と構成が素晴らしい。最後の落ちも良い。

弱みを握られた脇坂篤が、訳ありの高額の現金を預かる。その現金は出所後に持ち主に渡すことになっていたが、長年好きだった匠子が結婚したことにより、篤は、開き直って1人半年の契約で合計6人の女性と付き合い、その現金を使いきってしまう。匠子の残像から離れられない男の切なさ、愚かさを感じる。

…篤はむくりと起きあがった。押入れのまえに、例のトランクはおかれたままになっていた。彼はいちど深呼吸をしたのち、止め金をはずし、いっきにそのふたをひらいた…

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装幀:真鍋博