乱読からのつぶやき

「唐草物語」澁澤龍彦

安倍晴明プリニウス藤原清衡、コムバボス、始皇帝などの話が12話書かれている。あとがきに、澁澤が「あらゆる模様のうちでアラベスクはもっとも観念的なものだ」とボードレールが『火箭』のなかに書いている。いうまでもなくアラベスクとは、唐草のこと。コント・アラベスク、唐草物語のことで、ボードレールの言葉に由来した題名としていると書かれている。不思議で幻想的な話。

…すでに五億年前の海底で、海胆(うに)が現在とまったく同じような海胆だったということだろう。たとえば最新の自動車や飛行機のかたちが、これ以上は改良の余地がないほど機能的に洗練されているように、海胆は、早くも五億年前から、進化の極限としての現在のかたちに到達し、その後は、ほとんど何の変化もなかったらしいのである。これを高等動物といわずしてなんといおうか…

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装丁:中島かほる