乱読からのつぶやき

「青春怪談」獅子文六

美男子で合理主義の慎一と、バレエに身をささげようとする千春の話。その二人をうらやむ周囲の人から、仲を引き裂こうと怪文書が届く。それぞれの親のことなど、いろいろな要素も入り交じり、昭和の白黒映画を見ているような感じで楽しく読める。

…新橋駅で、偶然、千春と慎一を見たのは、肉眼の働きであって、彼女は、二人が別れたのを見るや、タキシに乗って、麹町のバス停留所へ、先き廻りしていたのである…

…時計は、すでに、五時二十分を、指している。同じ場所に、待合せの男女は、何人もいたが、それぞれ、一組となって、散っていくのに、ボンヤリ立っているのは、慎一と、後から現れる新手だけだった。バカにしている。こんなに、待たせるなんて…

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 装幀:馬淵聖。昭和29年発行。