乱読からのつぶやき

「中央線小説傑作選」南陀桜綾繫編

内田百閒、五木寛之、小沼丹、井伏鱒二、上林暁、原民喜、太宰治、吉村昭、尾辻克彦、黒井千次、松本清張と豪華な作家作品で構成されている。 太宰治や松本清張のハラハラドキドキ感が特に良かった。たまらん坂のエピソード探しも良い。 …同じ中央線沿線の武…

「とりかえばや物語」田辺聖子

古典作品で田辺聖子氏が現代語訳し読みやすくなっている。あとがきによると、軍国主義の戦前では、退廃的な物語は読むことが出来なかった。この物語は、筋の面白さ、奇想天外なアイデア、人物像が生き生きしている、現代的な刺激に満ちていると評価している…

「推し、燃ゆ」宇佐見りん

実生活で思い通りに行かない時、精神を安定するために、何か縋りたくなる時がある。この小説の主人公は、アイドルグループの上野真幸くんがそれだった。その彼がファンを殴ってSNSで炎上する。推しの彼が普通の人になったら… …携帯やテレビ画面には、あるい…

「河合隼雄の読書人生ー深層意識への道」河合隼雄

「深層意識への道」を復刊した文庫本。読んだ本を自分の人生の中で、どのように生かしたか、読書体験を通した自伝のような本。幼少の頃は、「少年俱楽部」「世界名作選」を兄たちと読める環境にあり、大学時代には、夏目漱石やホフマン等読んでいるのが興味…

「アポロンの島」小川国夫

小川国夫氏が自費出版した作品。写真の本は、9年後に審美社から出版された本。本人のあとがきに、アポロンの島は、昭和三十二年に多島海のミコノス島へ行った時のことを殆どそのまま書いたと記されている。情景が浮かぶ書き方が良い。 …ミケネの遺跡はアテネ…

「ブラックボックス」砂川文次

第166回芥川受賞作品。自転車走行の描写がアクティブに書かれている。後半の切り替えしも文脈が面白い。 …働くというのは、選んでいるように見えてその実選ばれる側なんだ、と思い知らされたようだった。ちゃんとできるなら今すぐにでもしたい… 装幀:川名潤

「毎月1万円で2000万円つくる!つみたて投資・仕組み術」森永康平

情報を得ることは大切です。「老後2000万円問題」から1年後の2021年1月出版された本。投資の王道と呼ばれる「つみたて投資」を中心に分かりやすく書かれている。「将来のことは誰にもわからない」という当たり前のことを忘れずに、お金のことを考えてみるの…

「死の快走船」大阪圭吾

短編15編、昭和初期の頃の探偵小説作品。「新青年」等に掲載されたもの。江戸川乱歩の時代を彷彿させ、内容も面白い。 …履歴書によると、水田女史は新潟の出身で、なかなか教育もあり、驚いたことには、現在東京市内の某市立女学院の家事の先生を務めている…

「月まで三キロ」伊与原新

月のこと。雪の結晶のこと。アンモナイト化石のこと。プレアデス星のこと。火山のことなど、科学的視点とストーリーの混在が良い。読みやすくて引き込まれる作品。 …自分でもたじろぐほど胸が震えた。誰かに心配されるというのは、こんなに嬉しいことだった…

「苦海浄土」石牟礼道子

水俣病について書かれた名作。患者側の目線から、当時の漁業者の気持ちが伺える。十年以上続いた人災は恐ろしい。 …綱についてくるドベの工合からみて、漁民たちは、湾内の沈殿物は三メートルはある、と推測していたが、後にくる国会調査団も沈殿物を三メー…

「文藝春秋2022年1月号」創刊100周年記念

創刊から100年!よくぞ続いてくれた。100年の100人を読むと、層々たる名前があがっている。記事を書いた方々も有名な方が多い。2世3世も健在。BEST OF 日本の顔も良い。 …本田宗一郎:「お前たち、ホンダが何をやっているのか知ってるか?」と聞いてきた。み…

「古本マニア採集帖」南陀楼綾繁

本、古本好きの36人にインタビューした本。少しずつ1か月かけて読みました。古本の話は癒されます。古本屋に来年も行こう。 …「本の海で溺れて」とあるが、ただひとり溺れているだけでない。南陀楼さんはその海の泳ぎ方がじつによいのだ。そして、同じように…

「東京の古本屋」橋本倫史

2019年から2021年の間、10店舗の古本屋で3日間過ごした内容。古本屋の様子や、東京古書会館での古書交換会や、南部古書会館での古書即売会の様子など盛りだくさん。古本屋さんに行きたくなる〜 …お弁当を食べ終えると、皆、古書交換会が開催されるフロアに戻…

「フルハウス」柳美里

表題のフルハウスともやし2作品が読める。フルハウスは、崩壊した家族を家を建てて再建しようとする父。再建できないと分かった父は、ホームレスになってしまった家族を住まわせる。2作品ともに、怖い。 装画:望月通陽

「ひとくち童話」東君平

詩のような短い文章の中で、物語が完結している。コーヒーを飲みながらゆっくりと読みたい本。 …空びんは、ポカンと 口を あけて、台所に たっていました。「ぼくは もう やくにたたないのかな」ある日、ドロボウがはいりました。どろぼうは、空びんに つま…

「コミュニティデザインの時代」山崎亮

コミュニティデザインの先駆者。人がかわり、地域も変わる事例が紹介されている。進め方の4段階。1.ヒアリング、2.ワークショップ、3.チームビルディング、4.活動支援で行われる。地域のみんなでまちづくりの楽しさが分かる一冊。 …優れたデザインは豊かな生…

「小商いのすすめ」平川克美

移行期的混乱で、「有史以来初めての人口減を食い止める方策は、経済成長ではない。それとは反対の経済成長なしでもやっていける社会を考想することである。」と指摘している。東京オリンピック(1965年)から社会が変わったと書かれている。後半は、東日本…

「エクストリーム・エコノミー」リチャード・デイヴィス

エクストリームは、極限という意味で、極限状態の経済について書かれている。事例では、インドネシアの津波に飲みこまれた町アチェ。ザータリー難民キャンプ。ルイジアナ州立刑務所の極限経済を検証している。難民キャンプは、電子マネー(カード)が支給さ…

「ギャシュリークラムのちびっ子たち」エドワード・ゴーリー

大人のための絵本作家。1925年シカゴ生まれ。5歳で「ドラキュラ」「不思議な国のアリス」を読み、7歳で「フランケンシュタイン」、8歳になるころにはヴィクトル・ユゴーの全作品を読んでいたらしい。河出書房新社が多くの作品を出版している。シュールな内容…

「先端で、さすわ さされるわ そらええわ」川上未映子

2008年1月、青土社。文庫版は、ちくま文庫。第14回中原中也賞を受賞した作品。物語性があるようでない、短文だが、脳ミソをフル回転しながら読み進めた不思議な作品。分類は”詩”になる。 …数え切れない皺に守られて慈悲を練り込んだような暗黒の象の目なので…

「今夜も満室御礼」川村晶子

1966年から30年間働いた、歌舞伎町のラブホテルでの出来事。ノンフィクション作品だが、多少大げさに書かれているかもしれない。昭和の匂いが漂う内容に微笑んでしまった。人間の本性を垣間見た。 カバーデザイン:石川かおり

「ぼくはオンライン古本屋のおやじさん」北尾トロ

2000年9月出版作品。20年前は、まだオンラインがそれほど一般的な買い方でなかった時代にオンラインの古本屋「杉並北尾堂」を開業した話。開業を考えてない方も楽しめる。後半は開業してから10か月間の日記が記され、売り上げや儲け額も載っている。楽しくも…

「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」ブレイディみかこ

英国での中学校生活を長男を通し語っている。英国の貧困、差別、分断などの現状を知ることが出来る。水泳大会では、公立校と私立校と一緒に泳がない。そして、裕福な地域にある学校の生徒は、スイミング・スクールで鍛えられ、競泳用の水着を着ているのでタ…

[SDGs入門」村上芽・渡辺珠子

日本総合研究所の二人の著作。日経文庫でSDGsを読む。知っている様で知らないSDGsの基本が分かる。2015 年9月25日国連サミットで全会一致で採択された。先進国・途上国すべてがターゲットになり、誰一人取り残さないをキーワードに持続可能で貧困のない社会…

「スタンフォードの自分を変える教室」ケリー・マクゴニガル

意志力を科学的に解析し自分の意志を理解する。そして、自己コントロールを行い、なりたい自分に近づくための本。10回のスタンフォード大学の講義を本にしたもの。 …自己コントロールが筋肉に似ているといっても、まさか腕の力こぶの下に自己コントロール筋…

「これからの『正義』の話をしよう」マイケル・サンデル

2010年に出版された本。ハーバード白熱教室としてNHKでテレビ放映された。今読んでも思考力があがる内容。もし一人の命を犠牲にすれば多くの人が助けられる。そのために、その人を突き落とすことが正義なのか。人工中絶やES細胞研究容認論では、受精卵や幹細…

「一箱古本市の歩き方」南陀楼綾繁

2009年11月に発行。2005年、東京の谷中・根津・千駄木(谷根千)で「不忍ブックストリートの一箱古本市」が始まり、その後、全国に広がっていく。この本を読んでいると、身体がムズムズして来て何か始めたくなる。2011年東日本大震災、2020年、2021年コロナ禍…

「刺羽集」横光利一

昭和十七年発行、戦前・戦中のエッセイ。当時の夏も暑く、二階では暑くて本が読めず、下の涼しい部屋へ潜り水枕を造って本を読んでいる。巴里では岡本太郎と会っていることも分かる。 …暑さが加はつて來ると私の二階では本が讀めない(略)この部屋は三方明…

「ぼくはこんな本を読んできた」立花隆

読書の仕方、本の買い方、書斎についてなど書かれた本。地下一階〜三階まで本棚が並ぶ事務所のネコビルは、妹尾河童が書いた見取図と顚末記が載っている。本好きにはたまらない本。今年の四月三十日に八十歳で逝去された。 …一つは読書それ自体が目的である…

「20歳のときに知っておきたかったこと」ティナ・シーリグ

スタンフォード大学の集中講義。「手元に五ドルあります。二時間でできるだけ増やせと言われたら、みなさんはどうしますか?」「おなじ場面を二回書くという課題、一回目は恋に落ちた人の視点で、二回目は戦争で子どもを亡くした親の視点で」など、創造力や…